漫画寸評 ~2020/08
中間管理録トネガワ
- 無事最終回。まあ、安定して読めたし面白かった気がする。本編より面白い。
- 終わりも良かった。カイジさえ来なければ……。
- 作品の内容というより、この作品の存在そのものがスピンオフ*1に対して前向きな風潮を作り出した。そういう意味でエポックメイキングな作品。
ヒナまつり
- こちらも最終回。
- 中盤までは面白かった。ヤクザ+超能力という設定自体はそこまで目新しさはないが、シュールでぶっ飛んだ展開のストーリー、登場人物のクセの強さが相まって独特の雰囲気を出している所が面白かった。
- 明らかにポッと出のロックージョンが話の本筋になってからはちょっとビミョーな感じに。
- 何も考えてないギャグ漫画にメインストーリーつけてまとめていくとまあこんなモノか、という感じ。オムニバスの天才、石黒正数とかに学べばもっと良くなった気がする惜しさのある作品。
二月の勝者
- 中学受験(つまり、小学生の受験)が題材の変わった漫画。最近ドラマ化したため、1-3巻あたりまで無料になっていた。
- 大学受験と違って、中学受験は親と子の受験。発狂し崩壊する親子の物語が見られる。まあ、そんなハードじゃないけども。
- 切り口が面白いのと、あの手この手で問題解決していく黒木先生の手腕が光る。「次の一巻」の引きが強い読ませる作品。
テセウスの船
- 「僕だけがいない街」のような雰囲気の、過去と未来を行き来して過去の問題を解決するシリアスな作品。ミステリー……の分類なのかな。
- ドラマ化まで行くだけあって、読ませる面白さはある。
- が、ちょっと結末はイマイチ。ラストに向けてのカタルシスもちょっと足りない。「テセウスの船」という言葉との関連もぼんやりしたまま。80年代アメリカホラーか。
フラジャイル
- 病理医に焦点を当てた漫画。こちらもドラマ化済み。
- 病理医なんてものが存在していること自体初めてこの作品で知った。
- 設定や考証の緻密さ、ストーリー展開の上手さが光る作品。現役の病理医にも反応は良いらしい。臨床検査技師にとってはちょっと突っ込みどころがあるらしいが。
- 10割の診断出します、という決め台詞にあるように、一か八かの手術をドラマティックにやるような外科医ものとは違い、探偵もののような趣きに近い。文字は多いが、読ませる作品。大学で研究室にいた頃を思い出した。
魔女と野獣
- 最新刊まで。魔女とかいう超強いのが暴れまわってるからぶっ倒しにいきます、という感じ。
- 世界観がよく作り込まれている。魔女といういまや普遍的なキャラクター性を「数えるほどしかいない」クソつよキャラクターに設定するの、自分も好き。(魔法の女子高生も、ひとりひとりの魔女に異名が付いている。燃える。)
- ビジュアルが良い。描き込みもかなり丁寧。
- あんまり難しいこと考えなくても読めるバトル漫画だが、まだ野獣の設定も全然明らかになっていないし、世界も広そうだし、結構深みがありそうな作品。ストーリーの展開が難しそう。今後に期待。
東京タラレバ娘 シーズン2
- ダメ。シーズン1は面白かったが、シーズン2はまるでダメ。登場人物に魅力がないし、話の中心はファンタジーなバーに入り浸るだけだし……。何がしたいんだろう。三巻発売したが、二巻まで。
- でも、コンセプトは変えずに登場人物は変えて再スタートを切るという姿勢は褒めたい。前作のストーリーの余韻を潰してはならない。続編とはこの形であるべき。
- ……が、いかんせん話が面白くない。前作の面白さは、三人の行き遅れ女子会があり、その第四出動が話の軸として色んな話に発展していくんだけど、タラレバ娘から脱出する=この話を終わらせるにはこの場所そのものから卒業する必要がある……という他の作品でもよくあるドグマからの離脱を構図として採用しているので、当然歴史によってその面白さが保証されているのである。というかそもそもタラレバシーズン1はセックス・アンド・ザ・シティのパクリなので、その構図にそっくり現代の日本の30代女性を当てはめるだけで絶対面白いんだって。
- 正直シーズン2一巻の時点で疑問符しか湧かなかったので、シーズン3に期待したい。
アンデッドアンラック
- 不死身の肉体を持つ邪道系主人公の王道ストーリー。敵をぶっ倒していくうちに世界の構図が明らかになり、ストーリーの大筋がはっきりしていくタイプで、見せ方がかなり上手い。本筋に入るのは二巻から。
- 不死身・不幸・不可視など不がつく能力を持つ能力者たちという設定も上手いし、その魅せ方・演出も上手いし、世界の理に絡めてストーリーのスケールをどんどんでかくしていくの上手い。いずれもひとクセあるキャラクターたちも魅力的で、引きの強い作品。少年誌でセッ○スとか言うな。
- 能力も主人公はただ不死身なだけなんだけど、それを応用して指再生ミサイルとか足再生ジャンプとかメチャクチャなことやってて面白い。いつも全裸。
- ただ、常に前のめりのダッシュなのでどこかで息切れして終わりそうな感じを節々から感じる。5,6巻くらいで。能力バトルモノで長続きしている作品(ジョジョやナルトなど)と比べると、作品を通した「匂い」とか「雰囲気」「空気感」みたいなものが足りない気がする。言語化難しいけど。うえきの法則が近しいかも。
親愛なる僕へ殺意をこめて
- 二重人格の主人公がもう一人の自分の足取りを追いながら過去の殺人事件の真犯人を探すミステリー。
- 話の展開が上手い。登場人物全員ヤバい。ショッキングな描写もあるので人を選ぶ作品だが、一巻を読んで気に入れば。
今月のイチオシ:怪獣8号
- 怪獣を退治した後の掃除班=清掃業者の物語……と見せかけて自分が怪獣になってしまうが諦めずヒーローを目指す(?)物語。
- 文脈はニチアサの改造ヒーロー。正体を知られちゃいけない。
- 今どきのジャンプ+っぽい、一話にめっちゃ詰め込んでくるタイプ。面白いけど、最近のバズる漫画全部それなのでそろそろ読者は食傷気味か。とはいえ、二話以降も安定して話を組み立てているので今の所面白い。
- 清掃業者の方も掘り下げてほしいが、厳しいかも。この手の物語は中盤あたりからダレてくるので、頑張ってほしい。
*1:それも、アシスタントが似たような絵柄でやる系統のもの
海外ドラマ寸評
名作と呼ばれるものを適当に見ていった結果。
メンタリスト
- メンタリストというものが何たるかを描く海外ドラマ。
- といいつつ、メンタリストの能力を事細かに説明するわけではないので、コールドリーディングあたりの前提知識はあったほうが面白い。あ、ここであれを把握したな、みたいに推測したり。
- テンポがよく単話も面白いので息抜きに安心して観られるクオリティの高いドラマ。吹き替えも良い。
- ただ、メインルートのVSレッド・ジョンは1シーズンで2,3話分しか進まず、もどかしい。組織のスケールはでかいがその正体は精細に欠ける。シーズン3のアイツのほうがなんかカリスマあったし。エンディングは良かった。
- とはいえ、全シーズン見る価値あり。海外ドラマにハマった一因。
プリズン・ブレイク
- まあ鉄板どころ。刑務所からの大脱走とその後の陰謀との戦いを描く。メンタリストとは打って変わって、全てのシーズンで視聴者の焦燥感を駆り立てる作りのドラマ。すごく長いが最後まで楽しめる。
- 割と運で何とかなってるところも多く説得力には欠ける展開もあるが、いつ誰が死ぬか分からない緊張感はGANTZにも通じる。
- 終わり方はまあよかったかな。もう少し普通に幸せになっても良かったのでは、という感じはあるが。
- メンタリストと違って一話見る毎に結構疲れるガッツリしたドラマ。
シリコン・バレー
- シリコン・バレー・ミームてんこ盛りのドラマ。ギークたちがのし上がる感じ。吹き替えのあるシーズン3まで。
- エンジニアにとってはあるあるネタが豊富かつ、シリコンバレーならではのスケールのでかいスケールアップを追体験できて楽しい。日本にはこんな羽振りのいい投資家なかなかいないもんね。
- 安心して観ていられるが、展開のアツさは若干低め。まあ、ギークらしくていいけどね。
SUITS
- 弁護士ドラマ。主人公の二人組がイケメン。
- アメリカの(多分)リアルな弁護士事情が見れる感じ。
- うーん、話自体は名作と言われるだけあって面白いんだけど、そんなに特筆すべき点がなく、続けて見ようという気が起きづらかった。シーズン2の途中まで。もう少し観ていると何かあったんだろうか。
ブレイキング・バッド
- 鉄板どころ。高校の科学教師がドラッグ王になって道を踏み外していくドラマ。
- プリズン・ブレイク系の、次の回が待ち遠しいスリリングな作品。のめり込ませる力がある。登場人物が魅力的で、悪役にも美学がある。
- 細かい描写に定評があり、多くを語らない。伏線も小ネタも多く、微妙な表情一つで心情の変化を語る。作り方が本当に上手く、学ぶ点が多い。
- こういう道を踏み外していく系の作品はラストに至るまでの「どこが分岐点だった?」という問いが重要になる。ラスト直前や一話前で「あの判断こそがいけなかった」となる作品は二流。ブレイキング・バッドは全ての選択において「こうせざるをえなかった」という説得力を持ち、では何もしなければよかったのか?と聞かれれば、主人公のウォルターは(彼の考える)男になりえずガンで死んでいくだけなので、それも(ベターかもしれないが)ベストな選択とは言い難かった*1。この必然性が、作品を何重にも深みのあるものにする。
- 今はベター・コール・ソウルをリアルタイムで追跡中。大衆向けからより落ち着いた雰囲気の作品になっている。ここの弁護士描写の理解にSUITSは一役買っているかも。
ウォーキング・デッドとゲームオブスローンズもいつか見たいのだが、あまりに巨大すぎてなかなか手が出ない。
*1:まあ、そもそも彼はそうせざるを得なかったからドラッグを作ったのではなく、ドラッグを作りたかったからそうせざるを得なかったような理由付けを自分自身にしている。
漫画寸評 2020/03~04
アルテ
- 無料一巻のみ。
- 森薫風。絵も森薫のように丁寧で繊細。
- キャラクターには魅力があるが、話に臨場感が無い。世界観の描写は細かいが展開はありがち。先を読みたい、とならない。
- これの前にブルーピリオドを読んでしまったのが良くなかった。ブルーピリオドを読もう。
ワールドトリガー
- 現行巻まで。
- なんとなく絵が好きにならなかったので敬遠していたが五巻くらい無料だったのを読んで最後まで読んでしまった。
- 人間同士の模擬戦、異世界との戦争の二軸だが、前者が結局面白い。みんなが好きな異能バトルものをもう少し形式的に落とし込んだもの。チームバトロワの漫画化。
- ただ、「とある」と同じく二軸の設定を活かしきれていないのが難点。話の構造から手を入れる必要があるので、どうしても連載モノだと難しいのだが……。とにかく、現状で面白いのでヨシ。
水たまりに浮かぶ島
- 一巻(現行)まで。
- 僕だけがいない街はとても好き。今作はまだ「めちゃくちゃ面白い」というほどではないが、二巻を読みたくなる感じがある。
GIGANT
- 現行巻まで。
- 奥浩哉の漫画はなんか読んでしまう。GANTZもいぬやしきもラスト周り以外はよかったので風呂敷を畳むのが下手……というのは多分誰もがわかっている。
- この漫画も多分投げっぱなしで終わる気がする。
- 登場人物が少なくてGANTZのように仲間がどんどん死んでいくカタルシスは無い。なんだかんだ言ってやっぱりGANTZは衝撃的だった。
- 多分全部同じユニバースなので全部回収してくれる作品がいつか出るはず。
らーめん才遊記
- 四巻まで。
- ハゲがラーメン語る漫画。他の海千山千のジャンル飯系漫画と大きな違いはないのだが、憎たらしいハゲを魅力的な人物に仕立て上げてるのは面白い。
- これ読んでると自動的に昼飯がラーメンになる。
笑ゥせぇるすまん
- 無料一巻。
- 漫画とかアニメとか視るたび思うんだけど、何が面白いのか分からないんだよね。どこに共感すればいいのか。喪黒福造に目をつけられた時点でどう転んでもバッドエンド(殆ど)なのがどうにも。週刊ストーリーランドのほうが面白くない?
村上海賊の娘
- 無料一巻のみ。小説は読了済。
- まあ話が面白いのはわかっているので置いといて、絵が上手いなー。守り人シリーズの漫画版も上手い人が描いていたんだけど、こういう人って普段どこに眠っているんだろう。
アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり
- 無料一巻のみ。
- 絵が結構上手くて話が面白い。多分本当はすごく地味な職業なので無理やり展開作ってる感は強いけど(まあ、職業ものって大体そうなんだけどこの漫画はちょっとそれが強かった)。
- 面白いんだけど二巻を今すぐ読もう、とはならなかった。でも一巻切りするってほどじゃない。時間が無限にあったら読む。
イチオシ
ブルーピリオド
- 現行巻まで。
- マンガ大賞2020で表彰された後にミーハーで読んだのでまあ、読んでいる人は既に読んでいるだろうけど。
- この漫画の何が一番スゴイかといえば空気感。臨場感とも言う。スゴイ絵を目にしたときの引き込まれそうになるあの緊張。ふざけた日常の中でだんだん一人一人が将来を考えて進んでいく、不可逆でどこか寂しいような嬉しいようなあの感覚。文字通り人生が変わるものを目にするときの張り詰めた神経とその弛緩。うーん、読ませるよね。気づいたら最新刊まで行ってた。
- 芸術という共感が得にくく難しいテーマを見事に漫画に落とし込んでいると思う。いろんな人の助けを得て作中に説得力のある絵画が登場するのも面白い。
- 強いて難点を上げるとすれば、会社に居た頃藝大卒の同期UIデザイナーがクソしょぼい仕事しかしなかったのであらぬところで藝大の価値が下がっている所かな。まあ、分からないよね。世田介くんも自分より下手な講師って言ってたし。